仙腸関節痛

原因のわからない腰痛、椅子に座った際のお尻の痛み、鼠径部や股関節辺りが痛むといった場合は仙腸関節痛が疑われます。
女性に多いと言われている仙腸関節痛。
レントゲン等では確定診断が困難な事から、ただの腰痛、あるいは原因不明と診断されるケースが目立ちます。

こちらでは、仙腸関節痛とはどのような病気なのか、症状と原因、診断方法や治療法についてお話したいと思います。

腰痛と仙腸関節の関係

骨盤の真ん中にある仙骨を挟んで、その左右にあるのが腸骨です。
これらを後ろ(お尻)側で繋げているのが、仙腸関節になります。

仙腸関節は、背骨の根元に位置しており、身体の中心である骨盤をしっかり安定させる役割をしています。
周囲は仙腸靭帯によって強力に固定されているため、大きな動きは出来ません。

しかし、日常の動作の際に腰・股関節の動きと連動して、腸骨が前後に傾く・外側に開く・内側に閉じるなどしながら、身体のバランスを取る働きをしています。
その動きは3〜5ミリ程度とごく小さなものであるため、レントゲンなどの画像診断では識別が難しいと言われています。

出産や中腰での長時間作業など、仙腸関節に負担が掛かると歪みが生じ、そのバランスが崩れます。
こうした仙腸関節の機能障害は、腰痛、あるいは臀部・下肢の痛み、しびれなどが生じる原因になると考えられます。

仙腸関節痛とはどんな病気?

仙腸関節痛とはどんな病気か

仙腸関節痛とは、何だかの原因によって仙腸関節に炎症や、ずれが生じることで痛みが起こる疾患です。
その他にも、仙腸靭帯の損傷や、靭帯・関節包などの周辺組織が伸びてしまうといった障害が起きることで、仙腸関節の周囲に疼痛を生じる場合もあります。

腰椎などに器質的な問題がある場合を除くと、腰痛や足の痛み・しびれの原因の大半(約8割)は、仙腸関節の機能障害であるとも言われています。
これまで、椎間板ヘルニアや変形性関節症、分離症、すべり症と診断されていた患者さんの腰痛も、実は仙腸関節の不具合がきっかけであるケースが非常に多いのです。

骨盤の後ろや股関節の痛みは仙腸関節痛の症状?

骨盤の後ろや片側の臀部、下肢の痛みや違和感が仙腸関節痛の主な症状です。
じわじわとした鈍い痛み、患部に重いようなだるさを感じるという方が多いようです。

患者さんが訴える事の多い、具体的な症状には次のようなものがあります。

  • 痛みで長時間椅子に座ることが出来ないが、正座は問題がない
  • 仰向きに寝ること、痛みのある側を下にして寝られない
  • 歩き始めや、動きだしに痛みを感じるものの、徐々に落ち着く

また、腰痛や違和感が仙腸関節の周囲だけでなく、お尻や鼠径部・股関節など、周りへ広がっていくという点も特徴的です。
一般的に、股関節痛や仙骨の痛みがある場合は、仙腸関節痛が悪化した状態と言われています。

さらに、症状が進行すると腰痛のある側の臀部、太腿の裏側、ふくらはぎにしびれや痛みが現れる事があります。
これは、不安定になった仙腸関節を支えるために緊張したお尻の筋肉が、坐骨神経を圧迫することで痛み・しびれを生じる、坐骨神経痛と呼ばれる症状です。

仙腸関節痛と関連痛

仙腸関節痛の患者さんには、腰痛だけでなく関連痛が見られる場合があります。
仙腸関節の機能障害の影響が腰以外の関節にも及び、身体の様々な部位に痛みやしびれが起きるのです。

関連痛は、次のような関節に起こりやすいと言われています。

  • 椎間関節(首から腰にかけての背骨の間の関節)
  • 肋椎関節(背骨と肋骨の間)と胸肋関節(背骨と肋軟骨の間)
  • 足首から足の指にかけての関節

例えば、患者さんの首や膝、足指の痛みが仙腸関節痛の関連痛の場合は、痛みの原因は患部ではなく仙腸関節の機能障害にあります。
よって、多くの場合、仙腸関節の治療を行うことで、腰から離れたそれらの部位の痛みについても改善が見られます。

なお、こうした治療でも痛みが消えない時には、別のアプローチによる治療が行われます。

骨盤の歪み?仙腸関節痛の原因とは

先述の通り、仙腸関節は骨盤を安定させる働きをしています。
骨盤は、背骨とその先にある重い頭部を下から支えるだけでなく、足腰など下半身を動かす際の軸となるとても重要な関節です。

骨盤に歪みやずれなどが起こり、仙腸関節に障害が起こると身体のバランスを保てなくなります。
すると、上半身の関節にもその影響が及び、歪みが生じることで腰痛を発症します。

骨盤の歪みやずれの原因は、出産、加齢による骨・関節の老化、腰をねじるなどした際の仙腸関節への負担などが考えられています。
また、姿勢の悪さや、長時間椅子に座り続けることなども骨盤や背骨に負担を掛けます。

仙腸関節に負担の掛かりやすい動作には次のようなものがあります。

  • 前かがみや中腰、腰を反らす姿勢を頻繁に行う
  • スポーツや事故で腰に強い衝撃を受ける
  • 日常的に長時間自転車に乗る、体育座りをする習慣がある

こうした負担から骨盤の歪みや仙腸関節のずれ、骨盤周囲の筋肉の緊張やこりを招き、腰痛を発症しやすくなるのです。
また、仙腸関節の歪み・ねじれが続くことで、慢性的な腰の痛み原因になるとも言われています。

妊娠中・産後、ヘルニア・ぎっくり腰と仙腸関節痛の発症

仙腸関節痛には発症しやすいタイミングや、関連性があると考えられる病気・症状があります。

妊娠・出産期の女性

骨盤は、胎児の重さを支え、出産時には大きく開らくなど、妊娠から産後にかけて大きく動きます。
直接的な負担が継続することもあり、女性は妊娠・出産をきっかけに仙腸関節痛や腰痛を発症しやすくなると言えるでしょう。

場合によっては、出産後に数年間も違和感や痛みが続く場合があります。
このため、なるべく早くに開いた骨盤を元に戻す事が望ましいとされています。

ぎっくり腰やヘルニアとの関連

急性腰痛(いわゆるぎっくり腰)の発症原因の一つに、仙腸関節の捻挫が挙げられます。
また、ねじれが状態が続くことで慢性の腰痛を誘因するとされています。

さらに、ぎっくり腰・ヘルニア・坐骨神経痛を患った経験がある、あるいは現在そうした症状がある方は、仙腸関節痛の発症リスクが高まります。
仙腸関節と背骨が身体のバランスをとり、腰に掛かる負担を軽減しているわけですが、痛みをかばう動作を続けることでバランスが崩れ、衝撃を十分吸収することが出来なくなります。
クッション機能が低下することで、仙腸関節の機能障害を起こしやすくなるのです。

仙腸関節痛の検査(テスト)と診断

仙腸関節痛の検査(テスト)と診断

仙腸関節痛の診断は、問診・触診・画像診断・理学検査(テスト)などの方法で行なわれます。

元々、3〜5ミリ程度の小さな動きしかない上に、仙腸関節痛の患者さんには目立った関節の変形や、破壊が見られません。
よって、腰痛の原因が仙腸関節にあるかどうかの判断は難しいとされています。

仙腸関節の障害が原因であっても、画像診断で変形やヘルニア等が確認できれば、多くの場合、変形性関節症や椎間板ヘルニアと診断され治療が行われます。
また、「特に異常がありません」、「筋肉疲労が原因の腰痛」、「老化に伴う腰痛でしょう」などの診断が下ることも珍しくないと言われています。

仙腸関節痛の徒手検査とレントゲン

仙腸関節痛の診断に有効な方法は徒手検査です。

というのも、ごく小さな動きをする仙腸関節の機能障害を、レントゲン・CT・MRIなどの画像検査で判断するのは難しいのです。
仙腸関節のひっかかりや、動きの悪さなどは、画像に写るようなものではなく、確認することが困難と言えます。

そこで、人の手によって行われる徒手検査(理学検査)が行われます。
徒手検査とは、患部を動かしたり伸ばす、押す・叩くなどして痛みの有無や強弱、神経的な症状など反応をチェックする方法です。

仙腸関節痛の診断には、痛みのある場所を患者さん自身が指で指し示す方法(ワンフィンガーテスト)や、仙腸関節を動かしたり、力を加えて痛みがあるかどうかを調べるニュートンテストが用いられています。
第三者に、痛みなどを客観的に説明するのは難しい面もありますが、徒手検査によって痛む場所や原因を探ることで、適切な治療を行う手掛かりが得られます。

仙腸関節痛の治療方法と対策

仙腸関節痛の治療方法と対策

では、腰痛の原因が仙腸関節痛であると診断された場合、どのような治療が行われるのでしょうか?
また、仙腸関節や骨盤周りのトラブルに効果的なストレッチ・体操もご紹介します。

病院で行われる治療(骨盤ベルト・ブロック注射)

整形外科では、痛みの緩和を目的とした保存療法を中心に治療が行われます。

消炎鎮痛剤・痛み止めなどを服用しながら安静に努めます。
また、骨盤ベルトやコルセット・テーピングを用いて患部を固定し負担を軽減することは、痛みを和らげるのに有効です。

こうした方法で痛みが改善しない場合には、患部(仙腸関節や靭帯)に局所麻酔薬を注射する神経ブロック注射が行われます。
注射によって痛みが抑えられ炎症が軽減することで、仙腸関節の歪みやねじれなど不具合の改善に繋がります。
ブロック注射は、整形外科の他、ペインクリニックなどでも受けることが可能です。

また、先述の仙腸関節の関連痛の治療については、関節運動学的アプローチ(AKA)が効果的とされています。
保存的な治療を行ってもなお、痛みが強く日常生活に不自由がある時には、仙腸関節固定術と呼ばれる手術が行われることがあります。

カイロ・整体で痛みが改善?

仙腸関節痛の症状を和らげるのに、カイロプラクティックや整体治療も有効です。

仙腸関節(骨盤)の歪みやゆるみを調整・矯正する治療を行うことで、不安定だった骨盤を安定させて腰痛を改善していきます。
徒手により仙腸靭帯などを正しい状態に戻して炎症・痛みを軽減し、その状態を維持するためにキネシオテーピング療法や、電気治療による筋肉や腱へのアプローチなどが行われます。

なお、症状が進行したケースでは、仙腸関節・骨盤を固定するのに時間が掛かるため治療が長引く傾向にあります。
また、腰痛が別の疾患の症状である場合も考えられますので、痛みなどが見られた場合、まずは整形外科等を受診し、内科的な疾患や骨折などの怪我がないか確認した上で、こうした治療を受けるようにしましょう。

仙腸関節痛に効くストレッチ・体操

医療機関で受ける治療以外にも、ご自身で行える効果的な対処法にストレッチや体操があります。
仙腸関節をゆるめるストレッチや、周囲の筋肉をほぐすことで辛い痛みが改善し、症状楽になると言われています。

特に、産後にお尻の骨(仙骨)が当たって痛みがあり仰向けで寝られない、ポキポキと鳴る方には特にストレッチが有効です。
また、仙腸関節痛と併発しやすい股関節の痛みに対しても、ストレッチが効果的とされています。

こうした運動には、骨盤の安定に欠かせない働きをしている大腰筋や・腸骨筋がほぐれるというメリットもあります。
マッサージでは十分ほぐすことの出来ない筋肉なため動きが悪くなりやすいのですが、ストレッチや体操を行うことで柔らかくなります。

仙腸関節の矯正に効く体操を一つご紹介しましょう。

用意するものはテニスボール(硬式)2つです。
これを横並びにして、ボールが動かないようにテープ等でしっかりと固定をします。

これを床に置き、仙腸関節の位置にこのボールが来るように仰向けで寝ます。
仙腸関節がほどよく刺激されているような感じがしたら、そのまま1分ほど待ちます。

時間は最長3分にとどめ、朝晩一回ずつ行うと良いでしょう。

仙腸関節痛のまとめ

仙腸関節痛のまとめ

レントゲンなどでは写りにくく、時に原因不明の腰痛と診断されてしまう場合もある仙腸関節痛。

しかし、仙腸関節のずれなどの不具合は、腰だけでなく身体の様々な関節の痛みに繋がります。
適切な治療を受け、症状を長引かせないためにも、早めに病院を受診して診断・治療を受けるようにしましょう。

腰にだるさや疲れ、張りなどの違和感を感じたり、軽度の痛みがある場合は、仙腸関節の問題の可能性があります。
発症リスクの高い、妊娠・出産を経験した女性はもちろん、年齢や性別を問わず、こうした小さなサインを見逃さないことが大切です。

また、日頃から腰に負担の少ない生活を心掛けたり、仙腸関節・骨盤周りのストレッチなどを行うことで、予防効果に期待が持てますので、積極的に取り組むと良いでしょう。


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